昔、こんな相談を見かけたことがあります。
「一人暮らしって、なんでこんなに疲れるんでしょうか。皿洗い、買い出し、ゴミ捨て、洗濯。水を触ると体が冷えて寒い。仕事と一人暮らしを両立している人は、本当に体力が持つんですか。このままだと自分は持ちそうにない。みんな、どうやってるんですか」
これ、実は15年くらい前の投稿なんです。でも、読んだとき「今もまったく同じだな」と思いました。人の悩みって、そんなに変わらない。なんなら、今の方が増えているかもしれません。
もしあなたが今、仕事から帰ってきて、疲れ果てて何もできずに横になって、気づいたら夜で、そんな自分に「なんでこんなこともできないんだ」と自己嫌悪していたら。この記事は、そういうあなたに向けて書いています。
まず、「できないのは甘えじゃない」という話から
いきなり解決策の前に、一つだけ受け取ってほしいことがあります。
体力も、脳の使い方も、人それぞれ違う、という当たり前の事実です。
同じ職場で、同じくらいの能力を持っているように見える同僚でも、持っている体力も、頭の使い方も、まったく違います。それなのに「自分ができることは、相手もできるはず」と考えてしまうと、その裏返しで「自分ができないことを、なんであの人はできてるんだろう」と苦しくなってしまう。
でも、そもそも比べる意味がないんです。箱の大きさが人によって違うんだから。
だから最初の一歩は、「今の自分は、この状況だと疲れるんだ」「このままだと続かないな」と、今の状態をそのまま認めてあげること。それだけでいいんです。
なぜ、疲れていると家事ができなくなるのか
これは根性の問題じゃなくて、脳の仕組みの問題です。
人の脳は、ストレスがかかっている状態だと、前頭葉まわりの働きが落ちて、処理できる量が減ると言われています。判断したり、段取りを組んだり、「よし、やるか」と腰を上げたりする力は、疲れているときには実際に落ちている。つまり、疲れて家事ができないのは、あなたが怠けているからじゃなくて、脳が省エネモードに入っているからなんです。
もう一つ、あの相談で気になった一文があります。「水を触ると体が冷えて寒い」。
これ、ただ仕事で疲れているだけじゃなくて、その奥に「寂しさ」があるんじゃないかなと思いました。冷たい水に一人で向き合う夜って、体の冷え以上に、心にこたえる。一人暮らしって、そういう孤独とも戦わなきゃいけない。そこの大変さも、ちゃんと認めていいと思うんです。
ちなみに冷えについては、単純な対策もあります。僕は冬場、徹底して水を触らないようにしています。皿洗いは必ずお湯。冷たいものにはなるべく直接触れない。生き物として、体温が下がるのを嫌がるのは自然な反応で、疲れているときはなおさらこたえるので、ここは我慢しないほうがいい。
「両立」という言葉を、もう少し小さくしてみる
あの相談者は「仕事と一人暮らしの両立」と言っていました。でも、この言葉、ちょっと大きすぎるんです。大きすぎるから、「重いタスク2つを同時にこなす無理ゲー」みたいに感じてしまう。
「一人暮らし」を分解すると、要するに「家事」のことですよね。だからこの悩みは、こう言い換えられます。
「仕事と家事を、どう両立するか」
こう捉え直すだけで、少し具体的になります。
そもそも、実家暮らしから一人暮らしになったり、環境が変わって家事を全部自分でやることになったりすると、今までやらなくてよかったタスクが一気に増えます。ご飯、洗濯、掃除…最低限の家事だけでも相当な量。そこに平日8時間の仕事が乗るんだから、処理しきれなくてパンクするのは、むしろ当たり前なんです。
あなたがおかしいんじゃない。単純に、量が多すぎる。
「おもちゃ箱」で考えてみる
ここで、一つイメージしてほしいものがあります。
一人ひとりに、「おもちゃ箱」があると思ってください。24時間という時間の中で、しかもその人が健康的に動ける範囲で、入れられる量が決まっている箱です。
多くの人は、この箱から中身が溢れて、山積みになってはみ出した状態で生活しています。その状態で、新しくやることが一つ降ってきた瞬間に、山が崩れて「どうしよう」とパニックになる。
すでに満杯なのに「どうすればこの箱に全部収まりますか?」と聞いてくる人がいます。でも、それはもう100トンプレス機で無理やり潰すようなもので、当然、中のおもちゃは壊れてしまいます。おもちゃ(=あなた自身)を壊したくないなら、やることは一つ。中身を減らすしかないんです。
そして、この箱の大きさ自体は、その人の健康状態や精神状態、それからお金によっても変わります。お金があれば、人に任せたり機械を導入したりして、「箱そのものを増やす」ことができる。ただ、こうして悩んでいる人は、お金に余裕がないことも多いですよね。大学生の頃の僕がまさにそうだったのでよく分かります。お金がないと自分でやるしかなくて、機械やサービスに頼る余裕もない。そうなると、本当に「今は我慢して、とにかくやることを減らす」しかない時期もあります。
選択肢は、大きく2つ
パンクした状態から抜け出す方法は、突き詰めるとこの2つです。
1つ目は「捨てる」。 やること自体をやめる。極端な話、仕事を辞めれば家事はできるようになります。タスクの総量が減るから。ただ、現実にはお金を稼がないといけないので、これは取れないことが多い。
2つ目は「自分でやらない」。 捨てられないなら、誰か(何か)に任せる。
そして、あえて言っておきたいのが、3つ目の「気合いで自力両立する」は、今はやめたほうがいいということ。だってもう、処理能力を超えているんだから。超えている状態でさらに頑張るのは、満杯の箱をプレス機で潰す行為そのものです。
これは「一生家事ができない」という意味じゃありません。まずは「今はできない自分」をちゃんと認めて、「しゃーないやん」と割り切る。それが先です。
家事ができなくても、あなたはサボっていない
「それくらいできなきゃダメだ」と言ってくる人もいるかもしれません。でも、気にしなくていい。周りが何と言おうと、あなたの体のほうが大事です。
だいたい、家政婦さんを雇っている人たちは、みんなサボり魔なんでしょうか。違いますよね。お金で他人の時間を買って、自分のリソースを大事なことに回しているだけです。
正直、「サボってる」という悪いイメージを持たれるのって、たとえば「洗濯を全然しなくて、毎日臭う服を着て、周りに迷惑をかけている」みたいなレベルのときだけだと思うんです。洗濯を洗濯乾燥機やコインランドリーに任せる分には、誰にも迷惑はかからないし、サボりだとも思われない。
家事は「小さくできる」
任せる・減らすと言っても、大げさなことじゃありません。今の時代、家事を小さくする手段はいくらでもあります。
普通に洗濯をしようとすると、洗剤を入れて、洗って、取り出して、干して、乾いたら取り込む、という多くの工程が発生します。これを洗濯乾燥機にするだけで、作業量は劇的に減る。
お風呂掃除も、貼り付けておくだけの防カビ製品(「防カビくん」みたいなもの)があるし、トイレも「ブルーレット置くだけ」のようなものを置いておくだけで、掃除の頻度をぐっと下げられます。しかもこういう便利グッズは、数百円から、高くても1,000円くらいで手に入る。
あれだけCMで「家事を楽にしよう」と宣伝されているのには理由があります。CMだと家族のいる家庭のイメージが強いけれど、家族がいて分担できてもなお大変なのが家事なんです。ましてや一人暮らしなら、それを全部一人で背負うんだから、大変に決まっている。
だからこそ、「自分でやらない・楽にする」方向に舵を切っていい。
「時間がない」の正体は、優先順位
1日は24時間しかありません。確実に何かができないなら、何かを手放す必要があります。そのときに大事なのが、優先順位を自分で決めること。
両学長も言っていましたが、「時間がない」というのは、多くの場合は優先順位の問題です。
たとえば「洗濯」で考えてみます。「時間がなくて洗濯ができない」というのは、裏を返せば「今やっている他のこと(ゲームでも仕事でも何でもいい)のほうが、洗濯より大事だと判断している」ということ。だから、洗濯というおもちゃが箱に入らない状態になっている。
じゃあ、この洗濯をどうにか箱に入れるには? 方法は2つです。
1つは、箱から他の何かを抜く。 もう1つは、洗濯というおもちゃ自体を小さくする。
「洗濯を小さくする」ってどういうことか。たとえば服の枚数で考えてみます。服を1着しか持っていない人が毎日着るには、週に7回洗濯しないといけません。でも2着あれば週3回で済むし、7着あれば週1回で済む。工夫次第で、同じ「洗濯」でもおもちゃのサイズは変えられるんです。洗濯乾燥機に丸ごとお任せするのも、これと同じ「小さくする」に当たります。
ついでに言うと、「ゲームをしているから家事をサボってはいけない」なんてルールは、どこにもありません。どうしてもゲームがしたいなら、ゲームの時間は残していい。優先順位を決めるのは、他の誰でもなく自分です。
今日からできる、3ステップ
最後に、具体的なアクションを。
- 今、自分が何をやっているのかを、できれば紙に書き出す
- 書き出すのすら面倒なら、今やっている家事を3つだけ頭に浮かべる
- それを「何か別のものに代替できないか」と考えてみる
そして、今の時代に一番おすすめなのは、AIに相談することです。「自分はこれが限界です。家事(洗濯、風呂掃除、部屋の掃除など)が大変なんですが、どう減らせばいいですか?」と聞いてみてください。
家事は、人によってやっていることも、「どこまでやらなきゃいけない」の基準も違います。だから、万人に当てはまる完璧な正解は存在しません。だからこそ、自分の状況を細かく伝えて、自分専用の答えをもらえるAIとの相談が向いているんです。
おわりに
やることを減らすのは、逃げでも甘えでもありません。脳科学的に見ても、ストレスがかかっている状態では、処理できる量は確実に落ちます。その事実をまず認めて、やること自体を減らしていく。それが、パンクした毎日から抜け出す最初の一歩です。
一人暮らしで、疲れて、家事ができない。それはあなたが弱いからじゃない。箱がいっぱいなだけ。まずは、そんな自分に「しゃーないやん」と言ってあげてください。
